『二月の勝者―絶対合格の教室―』第15講「三月の不一致」感想


『ビッグコミックスピリッツ』4月16日発売号に『二月の勝者―絶対合格の教室―』第15講「三月の不一致」が掲載されました。

親として未熟な父親を持つ勇人のお話の最終回です。


感想

「家庭円満」とは

「家庭円満」に見えても、その裏で誰かが無理をしているような状態は良くない。

職場ではない、地域でもない、家庭だからこそ、少なくとも私は、良い意味でお互いに甘え合えるような関係性を築いていきたい。たとえば、お互いに弱さを吐露できるような関係性を。

誰かが我慢することで「円満」になっている状況は良くない。一般的に、誰かの犠牲の上に成り立っているシステムは良くない。

その見方からすれば、3回に渡った勇人のお話は、我慢を強いられた妻の、夫への復讐譚と言えるだろう。虐げられていた者が復讐を果たす。我慢に我慢を重ねた妻が、我慢の限界を迎え、ついにはタンカを切って夫を圧倒する。

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教育費をかけたいという親の願い

夫の(くだらない)娯楽よりもわが子の教育にお金を使いたい――という妻の願いは、とてもシンプルなものだ。

勇人にどんな敵でもラスボスでも倒せるクソつええ武器持たせたいんだよ。そのためなら、課金ゲー上等!!

これは、親の切なる願いだと思う。

子どもの幸せを願い、幸せになれるように育ってくれることを願う。そのためなら、お金など問題ではない。お金で子どもの幸せを買えるのなら、いくらでも出そう……。


「見込みなさそう」なら塾はお金の無駄?

勇人の父親の、成績が悪いから塾にお金をかけるのは無駄という考えは、必ずしも妥当ではない。たとえば、お金をかけているからその成績で踏みとどまれているのかもしれない。「基礎の基礎」ができていないのならなおさらだろう。

ただ、中規模集団塾の春期講習を受けただけで「思ったより成績上がる」かどうかはわからない。


ふつうの子ほど中学受験

父親が言うように、勇人が「見込みなさそう」だというのなら、なおさら中学受験をするべきだ。

高校受験まで待っていたら、事態はもっと悪化する。当の父親の影響で、生活習慣や学習習慣が良好でなく、家庭環境も勉強に不向きな様子だから。

  • 部活動、
  • 強度の高い生活と、それによる疲労、
  • 複雑化する人間関係、
  • SNS、
  • スマホゲーム、……。

中学生の息子に対して、これらすべてを親がコントロールするのは不可能だ。

勇人が中学受験を嫌がっている様子はないし、家庭の経済力もありそうだ。6年間丁寧に見てくれる私立中学校に入れるのはかなりオススメできる。

普通の子ほど(ひとつの見方を採れば、高校受験で厳しそうな子ほど)、どこかに受かる見込みがある以上、中学受験はした方がいい。


「いいカモ」・「お客さん」

もちろん、下のクラスの生徒が「いいカモ」というのはまあ、その、塾の収益構造として……。

いわゆる「お客さん」である。

しかし、もし塾を辞めたら、勇人は公立中学校に進学し、高校受験に臨まなければならなくなるだろう。そこで彼がどのような高校に受かりそうかということを考え、それと母親の希望とを考え合わせると、通塾は続けるべきだと思う。

絞り取りに来る塾は本当に絞り取りに来る。桜花ゼミナールは(集団指導という限界もあり)良心的な方だろう。

【参考】TOMAS, SS-1, 受験ドクターの授業料・生徒数などを比較


塾はサービス業

「塾講師は『教育者』ではなく、『サービス業』」。これには全面的に同意する。

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感想つづき「課金ゲーム」の比喩

課金ゲームの比喩は、そこまでピンとこなかった。

黒木が言う「仮想敵」とは、一体何(誰)のことなのだろうか。父親のことだろうか。また、黒木の言う「射幸心」とは、一体どういう気持ちを指しているのか?


塾経営の方が課金ゲームでは?

課金ゲームはむしろ、塾経営の方ではないかと思うことがある。

課金すればするほど、レアカード(元から優秀な生徒。たとえば、私立小学生や、御三家に通う高校生など)を多く引ける。

課金が足りないと、ノーマルカード(一般的な生徒。たとえば、補習希望の小学生や、部活動をがんばる公立中学生)を一生懸命強化して戦わなければならない。そうすると、トップ層で戦える機会が少なくなる。


課金プレイの強み

常にトップ層で戦っていないと、そこでの戦い方の勘が鈍る。たまに引くレアカードを強化する方法を忘れてしまう。また、トップ層で戦わないと、報酬が比較的低くなる。

理想としては、スタートダッシュで廃課金してレアカードを集め、「先頭集団」に入り、そこでの戦い方を身につける。そこで成果を出せば報酬を多く得られるようになるから、そこでまたガチャを回し、強いカードを引く。

また、消耗品(通常アイテム)にも潤沢な資金を回し、時間を節約する。節約した時間で、デッキを考えたり、勉強したりして、さらにプレイヤースキルや知識を高め、増やしていく。

課金ゲームでは、時間をお金で買う面も強い。課金が足りないと、雑務など下らないことに時間を使わされるから。

窮すれば鈍ず。然るべき対価を得られるプレイヤーとなるためには、一定程度の課金は不可欠だ。

【参考】

【参考】https://twitter.com/mzykrn/status/796713176049954816

飲食店では色々バイトしたけど、料亭で着物着て時給2000円でバイトしてた時が一番待遇がよくて(お客さんからの……はないし、チップも貰えて、料理長お手製のまかないもつく)気持ち良く働けたし、客層と働きやすさと時給は比例するんだな…って思った。


もちろんゲームの楽しみ方は一様ではない

もちろん、トップ層で戦うことだけがゲームの楽しみ方ではないことは、言うまでもない。先頭集団を走ることだけがマラソンの楽しみではない。

こつこつとノーマルカードを引いて、一生懸命強化して、戦果を喜び合う。これもとても楽しい。

また、生徒の側からしても、ノーマルカードがレアカードの強化素材にしか見なされないような塾に通わせられたら嫌だろう。


これまでの感想

勇人編(中学受験に対する夫婦の温度差)

花恋編(フェニックス(サピックス)への転塾)


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