『二月の勝者―絶対合格の教室―』第12講「三月の邂逅」感想


『ビッグコミックスピリッツ』3月19日発売号に『二月の勝者―絶対合格の教室―』第12講「三月の邂逅」が掲載されました。

今回は、花恋がフェニックス(サピックス)から桜花ゼミナールに戻ってくるお話です。花恋のお話の最終回となります。


感想

作者の意図?

作者の意図はおそらく、「花恋に「大きな『無理』」をさせて上位校に入れることは、花恋の『12歳のその先の人生のことまで考えているのかな』」というものだろう。

花恋はフェニックス(サピックス)での競争に没頭しているが、夜遅くまで勉強したり、無意識に(?)髪を抜いたりしてしまっており、母親が心配している。

そうした「大きな『無理』」をさせることは、花恋の「12歳のその先の人生のことまで考えている」ことではない――というのが、作者の意図だろう。

しかし、私には、花恋の「12歳のその先の人生のことまで考え」るのであれば、花恋はフェニックス(サピックス)に残した方が良かったように思える。

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「上位校にのみこだわった指導」

花恋のように、

  • いきなりサミット3(アルファ3)に入れる程に本人の実力があり、
  • プリント管理などができている家庭環境がある。
  • 何より、本人が競争に夢中になれている

のであれば、桜花ゼミナールよりもフェニックス(サピックス)の方が良い環境だろう。特に、中学受験の結果を求めるのであれば。そして、中学受験の結果を求めるということは、花恋に対しては、「12歳のその先の人生のことまで考え」ることになるだろう。

花恋は、黒木に

「あたしが自分でやりたいって言ってるのに邪魔しないで」

と言うほど、フェニックス(サピックス)での勉強に没頭している。そんな彼女に対して、周囲はブレーキをかけるのではなく、サポートに徹するべきではないのか。

花恋は、望み通りの結果が出なかったとき、

「あたしはフェニックス(サピックス)でやりたかったし、がんばってたのに、周りが止めたせいで受験に失敗した」

と思ってしまわないだろうか。

フェニックス(サピックス)の上位層は、周囲から見れば「無理」に見えるようなことを、むしろおもしろがったり、楽しんだりしているようにも思える。やや「ブラック」な考え方かもしれないが、「本人の意思」を尊重すべきではないか。

少なくとも、サミット3(アルファ3)からクラスを落としてもいないのに転塾というのは、早すぎるように思われる。


桜花ゼミナールの雰囲気

桜花ゼミナールの教室では、女の子たちが集まって、戻ってきた花恋にキャッキャと算数の質問をしている。

花恋はそれに答えながら、

「居心地サイコー。塾(ここ)が大好き」

と思う。

これは、あまり良い環境とは言えないのではないだろうか。


人間関係のトラブルに発展しやすい

まず、女の子たち同士があまりに親密だと、人間関係のトラブルに発展しやすい。特に受験直前期、各々に高いストレスがかかったときに、いじめやいたずらといったトラブルが発生しやすい。

その子たちの学力レベルにも大きな差があり、たとえば歩夢は品川女子学院が「とてもとても…」というレベルである。学力レベルに大きな差がある子同士が塾で親密にしゃべっているのは、気にならないといったら嘘になる(下に揃いがち)。


生徒同士での教え合い

また、生徒同士で問題の解答・解法を教え合うというのも、あまり好ましくないように思われる。

花恋からしてみれば、自分よりも偏差値がかなり下の相手に問題を教えることによって、自分の貴重な勉強時間を奪われる。

歩夢にとっても、

  • 歩夢自身で考える力がつかない
  • 指導者が、歩夢のつまづき箇所を見落とす原因になる

といったデメリットがあるだろう。

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損得勘定

作中、フェニックス(サピックス)の講師が黒木に対して、

「あいかわらず、生徒に値札つけて損得勘定してる感じですか?」

と煽る場面がある。

この「損得勘定」は、塾が慈善事業でない以上、とても大切なことだ。

やる気も能力もない生徒に対して、限りあるリソースを(過度に)投入することはできない。

やる気も能力もないが、ご家庭の経済力だけはある――という場合には、「お客さん」とする。学生講師でも充てて楽しい授業を受けてもらい、最終的には塾推薦を使うなどしてどこかに合格させて、総合的な顧客満足を得る。


ワークライフバランス

また、その講師は続けて黒木に

「いくら積まれたら、『6年のサミット1に入れたら黒木先生に教われる』って思って頑張ってきた生徒たちを放って移籍なんかできるんですか?」

と詰め寄る。

「分かって」言っているのなら悪質だと思うし、本気で言っているのだとしても距離を置きたい考え方だと思う。

(雇用されている)塾講師である以上、生徒は(ふつう)毎年あてがわれる。その目の前の生徒たちを優先していると、自分自身の身動きが取れなくなる。あくまでも契約だと割り切るべきだ。

女性講師の中には、

「私が産休・育休に入ったら生徒たちに迷惑がかかるから……」

と気をつかっていらっしゃる方もいる。しかし私は、あくまでも仕事は人生の一部分に過ぎず、大切にすべきは生徒たちよりも家族だと考える。


心のスキマを埋める講師

黒木は花恋に対し、塾外で私服で、夜、一対一で接触し、親密さと理解とを示すことで目的を達成した。つまり、花恋をフェニックス(サピックス)から桜花ゼミナールへと引き戻した。

こういう「人たらし」な講師は確かにいる。生徒と年齢が近ければなおさらだ。

親密さを自在に演出できる講師は、本当に強い。しかしそれは、相手に対する思い入れが少ないからこそできることのような気もする。


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