吉野万理子『南西の風やや強く』のヒロイン、由貴が中学受験に失敗した欧華女学園のモデルはフェリス女学院、高校受験に成功した横浜恒陽高校のモデルは横浜翠嵐のようです。
目次
『南西の風やや強く』あらすじ
狩野伊吹(かのう・いぶき)は、エリートの父親から「首都圏でもっとも難関だと言われる中高の一つ」聖慶学園中学校に進学することを期待されていた。しかし、自らの意志で公立中学校へと進む。父親を襲ったがんに悩み、また、幼馴染の東谷由貴(ひがしたに・ゆき)との距離を縮めつつ、伊吹は高校3年生になっていく。
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由貴の中学受験「失敗」
ヒロインの由貴の中学受験「失敗」について、作中では以下のように描かれています(62 ~ 63 ページ)。
彼女は、中学受験に失敗したのだ。噂では、神奈川県で一番古い歴史をもつ欧華女学園を受けるはずだったらしい。なのに、試験日前々日に、インフルエンザにかかってしまって、会場にすら行けなかったのだった。
聖慶ほどではないけれど、欧華も難しい。そこに行けたかもしれないのに、今ここ〔公立中学校〕にいるおれたち。そんなふうに自分たちをくくっているやつがいると知ったら、きっと由貴は軽蔑するだろう。
2日以降の併願校で私立中学校に合格を取れそうな気もしますが、由貴は公立中学校への進学を選んだようです。
私立中学受験をしたにもかかわらず公立中学校に進学するというのは、珍しい選択だと思います。
欧華女学園
作中で欧華女学園は「神奈川県で一番古い歴史をもつ」とされています。
県内で一番古い歴史をもつのは、「1870 年にアメリカから派遣されたキリスト教女性宣教師によって始められた」フェリス女学院です。
※ フェリス女学院 2020 年度入試向け学校案内パンフレット,1ページ.
ここから、欧華女学園のモデルはフェリス女学院だと考えられます。
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現存する最古の女子校
『サンデー毎日』2019 年7月7日号の「令和版 日本の名門高校」には
女子校ではフェリス女学院が 1870 (明治3)年の創立だ。東京の女子学院も同年に設立されている。この2校が現存する最古の女子校だ。
という記述があります(ライターは猪熊建夫さん)。
フェリス女学院は「神奈川県で一番古い歴史をもつ」ばかりではなく、「日本で一番古い歴史をもつ」女子校でもあります。
「聖慶ほどではないけれど、欧華も難しい」
聖慶学園は「首都圏でもっとも難関だと言われる中高の一つだ」(62 ページ)と言われています(モデルはよくわかりませんでした)。その聖慶「ほどではないけれど、欧華も難しい」という書き方からは、欧華女学園の偏差値の高さがうかがえます。
やはり、欧華女学園のモデルは神奈川女子御三家トップ、フェリス女学院で間違いありません。
横浜恒陽高校
横浜恒陽高校のモデルが横浜翠嵐であろうことについては、
横浜恒陽高校のモデルは翠嵐? 吉野万理子 近刊
https://kanagaku.com/archives/26334
をご覧ください。
フェリス失敗→横浜翠嵐
結局、由貴のこれまでの進路は
- 中学受験でフェリスを受けられず、公立中学校に進学
- 公立中学校から高校受験で横浜翠嵐に進学
というものだったと推測されます。
参考
- 七里ガ浜高校と鎌倉高校が『南西の風やや強く』に登場
https://kanagaku.com/archives/26134 - 駿台横浜校が登場? 吉野万理子『南西の風やや強く』
https://kanagaku.com/archives/26343