『円周率の謎を追う 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』の読書感想文例です。
分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で5枚を少し超える程度です。
目次
円周率の謎を追う 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦
広告
『円周率の謎を追う 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』を読んで
神奈川 太郎
私は、あるソーシャルゲームでギルドマスターを務めている。その立場から見て、関孝和は、ぜひ私のギルドに加わってほしい人物だった。彼ほどソーシャルゲームに向いていそうな人物は、他にいない。
まず、私が使ったカタカナについて、少し説明をしておこう。
ソーシャルゲームは、多くのプレイヤーが競い合うコンピューターゲームだ。スマートフォンを使ってプレイする。
私がやっているタイトルでも、多くのソーシャルゲームの例に漏れず、「ギルド」というシステムがある。プレイヤー同士がチームを組んで、強力な敵を倒したり、他のプレイヤーたちと戦ったりするシステムだ。
さて、私のギルドはとても成功しているギルドだ。初心者から上級者まで、多くのプレイヤーに入ってもらっている。私と同じ中学生のようなメンバーもいるが、大人も多いようだ。それぞれが思い思いにゲームを楽しんでいる。
ただ、彼らのなかで「強くなりたい」という初心者に対しては、正直なところ、モヤモヤとした気持ちになることも多い。プレイの様子を見ていると、まるで強くなりそうな様子がないのだ。
彼ら・彼女らには、ぜひ関孝和の行動を見習ってほしい。
ソーシャルゲームでまず大切なのは、基本的なことを知ることだ。少なくとも攻略サイトぐらいは見ておかなければならない。
この点でまず、関孝和は合格だ。柴村盛之のもとで『塵劫記』を学び、しっかりと基礎をおさえている。
次に大切なのは、レベル上げをしっかりとすることだ。強くなるためのキャラクターメイキングを知っていたとしても、それを実行しなければ意味がない。
この点でも、関孝和はすばらしい。いつも算術のことを考えて、レベルアップをしている。儒学や剣術を適切にこなして、家族に算術を禁止されないようにしているのも、さすがである。『塵劫記』の次には『格知算書』を読みたい――というように、レベルアップの方針を知っていたのも彼の強みだった。
このくらいまで来ると、もう上級者の仲間入りである。パーティーを組んでダンジョンを攻略したり、ボス戦に臨んだりする楽しみが生まれる。しかし、ここまででは、ランキングに名前が載るようなトッププレイヤーにはなれない。
攻略サイトに従って、地道にレベルを上げるだけではなぜだめなのか。それは、新しい攻略法を生み出せないからだ。
攻略サイトに載っている情報は、誰もが知っている情報だ。みんながそれに従って強くなっている。だから、それだけではずば抜けて強くなることはできない。トッププレイヤーになるためには、自分で攻略法を編み出すくらいでなければならない。
関孝和の強みが最も発揮されるのは、この段階である。彼は『塵劫記』に書かれていた円周率三・一六を疑った。だれもが円周率に三・一六を使っていた時代に、だ。そして自分で計算の仕方を考え始めるのである。
三・一六ではない円周率を求める道のりは、かんたんなものではなかった。しかしだからこそ、その道のりで他の多くのトッププレイヤーたちと議論することができた。そして、新しいツール、天元術を知り、それを使いこなせるようになっていった。
天元術は、いわば攻略サイトに載っていない戦い方だ。他のプレイヤーとは違う次元でゲームを楽しめるようになる。初心者が関孝和のプレイを見たら、ボスに与える桁違いのダメージなどに目を丸くすることだろう。
関孝和は、さらにそこから進んで、算術というゲームの仕様を解析するための新しい手法、傍書法を編み出す。傍書法は彼の完全なオリジナル作品だ。そして、極めて強力な解析ツールだ。これを使いこなすことで、彼は正真正銘のトッププレイヤーになるのである。
トッププレイヤーとしてゲームをすることほど楽しいことはない。これは、算術のことばかりを常に考えて生きたごほうびだろう。算術というゲームをこのように楽しんだ関孝和と、ぜひ同じギルドでプレイしたいものだ。
しかし、それにしても、ソーシャルゲームには、いつかサービス終了が訪れる。また、その仕様は開発者には分かっている。これらの点で、私は不満に思うことがある。いくらゲーム内で強くなったとしても、いつかその世界は終わってしまう。また、いくらトッププレイヤーになってゲームの仕様を解析していっても、所詮は開発者の手のひらの上で踊らされているようなものだ。
だから、私はそろそろ、プレイするゲームを変えようかとも思っている。サービス終了がなく、開発者がいないゲーム。世界中の人々がプログラムの解析を試みているが、まだまだ分かっていないことが多いゲームを、プレイしようかとも思っている。そのゲームのタイトルは、そう、「現実」だ。
参考
- 話題ネタ!会話をつなぐ話のネタ,「【円周率の謎を追う】読書感想文あらすじ(ネタバレ)例文・オススメ度」, http://xn--5ck1a9848cnul.com/8954 ,2017年8月19日閲覧.