『ホイッパーウィル川の伝説』の読書感想文例です。
分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で5枚ぴったりです。
目次
ホイッパーウィル川の伝説
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『ホイッパーウィル川の伝説』を読んで
神奈川 花子
この世界には、私たちにはどうしようもできないことがあります。それは「運命」とでも呼べるものでしょう。運命が私たちに無慈悲な一撃を振り下ろしたとき、私たちは悲劇の主人公となります。
私たちにとって最も運命的な出来事というのは「死」に違いありません。私たちの誰も、死から逃れることはできません。
「悲劇」という見方からすれば、最も悲劇的な死は、愛する人の死です。自分の死ですら、愛する人の死に比べれば、悲劇でも何でもないでしょう。自分が死んでしまえば、その死んだ自分はもう悲しんだりしません。しかし、愛する人が死んでしまったら、死なれた自分は深い悲しみを味わわなければなりません。
『ホイッパーウィル川の伝説』で最も印象的だった言葉は「〈シルヴィ以後〉」というものでした。シルヴィが死んだあと、シルヴィを愛した人たちが生きなければいけない時間の名前です。
この物語は、愛する人の死から立ち直っていく人々の物語です。
死にも様々な形があります。最も悲劇的でない死は、十分に長く生きたあとの安らかな死でしょう。一方、最も悲劇的な死は、若くして死なれた突然の死でしょう。『ホイッパーウィル川の伝説』に出てくる、シルヴィとジークの二人は、共に最も悲劇的な死を死にました。シルヴィは事故死、ジークは戦死という形で。
「〈シルヴィ以後〉」、パパは仕事に行けなくなりました。また、ジュールズは学校に行けなくなりました。「〈ジーク以後〉」エルクはずっと立ち直れずにいました。パパもジュールズもエルクも、決して弱い人間ではありません。しかし、運命の一撃は、そんな彼らをも易々と打ち砕いてしまいました。
彼らの悲劇の舞台を少しずつ溶かしていった力は何だったのでしょうか。
パパの力は、その意志の強さでした。パパはかつて、ママの死をも乗り越えてきています。気力を振り絞って、ジュールズを学校に行かせ、自分も仕事へと復帰します。
ジュールズとエルクの力は、「悼む」ことの力でした。私たち人間が、はるか昔から形を変えて繰り返してきた「悼む」儀式で、ふたりは立ち直っていきます。
人を「悼む」こと、追悼することは、死者たちのためだけにあるのではありません。むしろそれは、残された生者のためにこそあると言うべきでしょう。死者はどれほど悼まれても、自分が悼まれているとは分からないのですから。
エルクには、戦死したジークの魂が故郷の森に帰ってきているような気がしていました。ある日、森に出かけたエルクは、おもむろに銃を取り出し、二十一発の「礼砲」を放ちます。そして、その銃を池へと投げ入れると、沈んでいく銃を見ながら敬礼を捧げました。他の人にとっては、何の意味もない行動です。しかし、エルクにとっては、ジークの死を悼む大切な儀式でした。この儀式を経て、エルクは以前の「サムの兄さん」へと戻っていきます。
ジュールズはどうでしょうか。彼女は「石の洞窟」で、シルヴィがどれ程パパと自分とを愛していたかを知りました。そして、自分もシルヴィに愛を伝えることを決心します。大切な蛇紋石を「願い石」として、「奈落の淵」へと投げ込む――そうすれば、「流星のように輝きを放つ」願い石が、ジュールズの願いをシルヴィへと届けるはずだ。「どんなに愛しているか、シルヴィにわかってもらえますように」。
人の死を悼む儀式は、本当に「儀式」に過ぎません。つまり、感情を抜きにして考えるのであれば、まったく意味のない遊びであり、生産性のない無駄であり、リターンをもたらさないリスクです。しかしそれでも、感情を持つ私たちは、そうした儀式をせずにはいられません。感情は、何よりも大切なものです。
『ホイッパーウィル川の伝説』の世界では、人は生まれ変わります。シルヴィはキツネへと、ジークはピューマへと生まれ変わりました。再び感情を抜きにして考えるのであれば、生まれ変わりなどあるはずがなく、これは大したおとぎ話です。
しかし、繰り返しますが、感情は何よりも大切なものです。たとえ証明できなくても、非科学的でも、馬鹿げていたとしても、生まれ変わるのだと信じる気持ちが、人を救うことがあるでしょう。その救いは、大いに尊重されるべきものです。
きっと「どんな生き物も誕生する前から何かとつながっている」というのは「本当」です。木や空、雨、風、星、魂までが、きっとある大いなる働きへとつながっているのです。わたしたちはひとつ。たとえ死別したとしても、愛する人とは、必ず、また会えます。
参考
- 話題ネタ!会話をつなぐ話のネタ,「【ホイッパーウィル川の伝説】読書感想文あらすじ(ネタバレ)例文・オススメ度」, http://xn--5ck1a9848cnul.com/8954 ,2017年7月23日閲覧.