教職員人事異動

文科相、中学受験準備の小学校休みに「通知出したい」4月

衆議院は、第 204 回 通常国会 文部科学委員会 第 10 号の議事録を公開しています。

2021 年4月 14 日に行われたこの会議では、公明党の浮島智子議員(比例近畿ブロック)が萩生田光一文部科学大臣に質疑を行いました。

このなかで浮島議員は、保護者は子どもを小中学校に登校させるかどうかの選択肢を持たない(必ず登校させなければならない)と主張。萩生田大臣はこれに呼応して、

皆さんが一斉に休んで〔中学〕受験準備に没頭しているような状況は、本来の義務教育の在り方として望ましくないと思っていますので、改めてしっかり自治体に通知を出したいと思います

と発言しました。


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議事録

○浮島委員

 おはようございます。公明党の浮島智子です。よろしくお願いいたします。

 本日は、学校教育とは何のためにあるのかという根本的なテーマに絞って萩生田大臣にお聞きをし、認識を共有したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 早速でございますけれども、大臣は、自主休校、そして選択登校という言葉をお聞きになったことはおありでしょうか。

○萩生田国務大臣

 新型コロナウイルス感染症の感染への不安から、いわゆる自主休校と称して学校に登校しない児童生徒がいることや、いわゆる選択登校と称し、学校に登校せず、自宅などでオンラインなどを活用した学習を希望される方がいることについては承知をしております。

○浮島委員

 先週の八日の日だったんですけれども、報道番組で自主休校の取組が紹介されておりました。その後もそうですけれども、私のところに、たくさんの地方議員さんの方から、保護者の判断で学校に行かせなくてもよくなったのかという声が多く寄せられました。

 もちろん、どうしても学校になじめなかったり、学校でいじめに遭ったりして不登校になった子供たちはいます。この子供たちをしっかりと支えることは、私たち大人の責任だと思っております。

 また〔中略〕文部科学省は、感染症の予防上、保護者が子供を学校に出席させなかった場合、感染の可能性が高まり、保護者が申し出る欠席の理由が合理的と校長が判断する場合には、出席停止とし、欠席とはしない扱いが可能である旨を周知しているところと私は承知をしております。これらの措置は当然だと私は思っております。

 しかし、自主休校や選択登校と称しまして、そもそも保護者には子供を学校に行かせるか行かせないかについてあらかじめ選択肢があるという誤解が生じることは、私は大きな問題だと思います。

 そもそも、学校という社会制度は何のためにあるのか。今国会でも、大臣と、私ども与党、そしてたくさんの野党の皆さんにも賛同いただいて、小学校三十五人の学級、これを実現したり、また、年間十兆円に近い公費を公立の小中学校等に社会が投じているのはなぜか。憲法に定める義務教育の理念の下、子供たちの社会的な自立と、国家、社会の有為な形成者としての資質、能力を育むという教育基本法に定める教育の目標を実現するためだと私は思います。

 そして、そのためには、学校において、教室において、意見の異なる他者、家庭環境など社会的な背景の異なる他者と対話をし、協働しながら、同じ経験をしたり切磋琢磨することが不可欠だと思います。

 また、学校は子供たちがリアルに集まるという固定観念の転換が必要といったかけ声の下、子供たちが学校に行く行かないを保護者が判断するという仕組みにした場合、大変問題になってくるのが、児童虐待、私はこれが見えにくくなると思っております。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、我が国の学校制度は、学校に行く行かないの選択は保護者が決められ、ホームスクーリングを認める仕組みではないと私は思います。自主休校又は選択登校という言葉がそのような意味を持つならば、我が国の学校制度の基本的な考えと仕組みは違ってくるのではないかと思います。

 そして、学校は、様々なバックグラウンドを持つ子供たちがリアルに向き合って対話、協働する場であって、社会の分断に対する大変重要な防波堤になります。不登校の子供たちや、持病を持っていて感染をどうしても避けなければならない子供たちのためのオルタナティブな仕組みは必要です。しかし、学校に行くも行かないも保護者の自由では、民主社会基盤である公教育は崩壊しかねないと私は思います。

 かねてから大臣とはこの点で認識が一致していると考えているところでございますけれども、昨今、この自主休校、選択登校という言葉が安易に使われていて、何の事情もないのに子供を学校に行かせない選択肢が保護者にあるという考え方は、我が国の学校制度に合致するものでないと私は思いますけれども、大臣として、どういうお考えか、明言をしていただきたいと思います。

○萩生田国務大臣

 先生、新学期が始まったこの時期に、極めて重要な御指摘をいただいたと思います。

 全ては今先生の質疑の中にございましたけれども、改めて申し上げれば、家庭や地域の経済的、社会的状況等にかかわらず、全ての子供たちに教育の機会均等を確保することは重要です。

 この趣旨に鑑み、日本国憲法第二十六条や教育基本法第五条においては、保護者が子を小学校、中学校等に就学させる義務を規定しており、特段の事情もなく保護者が子供を小学校、中学校等に登校させないことは、この義務に違反するものと考えられます。

 その上で、新型コロナウイルス感染症への対応に当たっては、あくまでも特例として、保護者から感染が不安で休ませたいと相談があった児童生徒等について、同居家族に例えば高齢者や基礎疾患がある人がいるなど、合理的な理由があると校長が判断する場合には、欠席とはしないなどの柔軟な扱いも可能である旨、昨年六月及び本年二月に、持続的な学校運営のためのガイドラインにおいてお示しをしました。

 しかしながら、義務教育は、原則、登校、対面が望ましいと考えており、まずは学校において、可能な限り感染リスクを低減させ、保護者の理解を得ながら児童生徒が登校して学習できるようにすることが重要であることから、引き続き、児童生徒の健やかな学びを最大限保障するため、必要な取組が適切に行われるように、自治体に再度周知をしたいと思います。

 先生御心配のとおり、実は、昨年度末、特に小学生で私立の中学受験を準備している御家庭のお子さんなどが、これを理由に一斉に休まれてしまったということを学校の校長先生たちからも相談を受けました。

 合理的な理由がなかなか見つからなくて、それは望ましくないという話だったんだけれども、しかし、何か雪崩を打つように皆さんが一斉に休んで受験準備に没頭しているような状況は、本来の義務教育の在り方として望ましくないと思っていますので、改めてしっかり自治体に通知を出したいと思います。

○浮島委員

 ありがとうございます。

 くれぐれも誤解のないように、文科省としてもしっかりとしたメッセージを発信していただけるように、再度お願いをさせていただきたいと思います。


参考文献

衆議院,「第204回国会 文部科学委員会 第10号(令和3年4月14日(水曜日))」,https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009620420210414010.htm,2021 年4月 14 日.