「夏のすいせん図書読書感想文コンクール 2019」高学年の部の課題図書、『マジックウッズ戦記1 闇の魔法 上』の読書感想文です。
分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で3枚程度です。
目次
『マジックウッズ戦記1 闇の魔法 上』
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『マジックウッズ戦記1 闇の魔法 上』を読んで
神奈川 太郎
この本を「夏のすいせん図書」に選んだ人は、いったい何を考えていたのでしょうか。「すいせん図書」になっているのは上巻だけです。ところが、上巻では『戦記』のほんのはじめの部分だけしか描かれません。上巻だけで感想文を書け――というのは、あまりにひどい話です。
それでも何か書こうとしたら、どんなことが書けるでしょうか。
まずは、すごいと思ったところから。この本の売りは、何といってもぜいたくなさし絵でしょう。本のあちこちに物語のイメージにぴったりのさし絵があり、絵のなかの英語までしっかりと日本語に訳されています。このさし絵によって、まるで絵本のようにページをめくっていくことができます。
しかし一方で、わたしは、あまり『マジックウッズ戦記』の世界に入っていくことができませんでした。わたしが(あくまでもわたしが!)あまりおもしろくないな、と思ったところについても、書いていきたいと思います。
わたしの不満の第一は、登場人物たちの頭の悪さでした。主人公のザーは、あまりいろいろと考えて行動するタイプではありません。はじめの黒魔をとらえる場面から、子どもっぽさばかりが目立ちます。ウィッシュにしてもそうで、夜の森で長々と話しているひまがあるのなら、さっさと要塞に帰るべきでした。きわめつけはボドキンのたよりなさです。読んでいるうちにいらいらしてきます。きっと「スター・ウォーズ」のC3POのような役回りだと思うのですが、「狂言回し」としてもあまりできたキャラクターではないでしょう。
頭が悪い子どもたちが行き当たりばったりに動き回って物語が進んでいくのが、わたしはあまり好きではないようです。私が好きなのは、頭がいい子どもたちがその時々の最善の選択をして、事態を悪化させていく物語です。
わたしの不満の第二は、物語に盛り上がりが欠けるところです。いくら『マジックウッズ戦記』の「1」の上巻だからといって(つまり、長い物語の一部分だからといって)ザーが黒魔のひとりすら倒さないというのはどういうことでしょうか。王子として、少しは魔力を覚醒させるべきだったでしょう。
わくわくさせるような表紙、たくさんのさし絵がついた魔法と剣の物語。これだけおもしろそうな素材で期待が高かったぶん、どこか肩すかしをくらったような気になりました。
『マジックウッズ戦記1 上』を課題図書に選んだ方は、きっと下巻も読んでほしいと思っているに違いありません。しかし、これから下巻を読みたいかといえば、わたしは(あくまでも、わたしは!)別に読まなくてもいいかなあ……。
参考
課題図書
課題図書 2019 夏のすいせん図書読書感想文コンクール
https://kanagaku.com/archives/27168