『フラダン』(古内一絵)読書感想文例


古内一絵『フラダン』読書感想文例です。

分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で5枚ぴったりです。

フラダン

フラダン (Sunnyside Books)

フラダン (Sunnyside Books)

  • 作者:古内 一絵
  • 出版社:小峰書店
  • 発売日: 2016-09-24

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『フラダン』を読んで

神奈川 太郎

 『フラダン』は、言葉を信じながら描かれた、強さと弱さの物語だ。そして、善意と悪意の物語だ。
 
 強さがあるからこそ、私たちは善意を抱くことができる。また、善意に囲まれていればこそ、私たちは強くあれる。その一方で、弱いからこそ、私たちは悪意の奔流に押し流されてしまう。また、悪意に曝されれば、私たちは脆くも崩れ去ってしまう。
 
 だから、私は強く善くありたいと思う。
 
 しかし、この社会のなかで、そうあることは難しい。「この世は自分たちの手には到底負えないほど大きくて、深い悲しみと理不尽でできている」。私はひとりでは、その悲しみと理不尽とに抗うことができない。だから、私は誰かと手を取り合って歩みたいと思う。
 
 ところが、誰かと一緒にいれば、「疲れるし、嫌な思いだってするだろうし、ときには諍いにもなる」。「どんなに頑張ったって、他の人の気持ちはやっぱり分からない」。無垢な善意を煩わしく思ってしまうこともあるし、自分の善意が受け入れられないことだってある。それぞれの思いがすれちがって、争ってしまうこともある。
 
 しかし、だからといってそこで、誰かと共にあることをあきらめてしまってはいけない。狭くて理不尽で、弱さと悪意に満ちた世界に抗う力をくれるのは、誰かと握り合った手の固さだ。
 
 だから私たちは、「もっと話すべき」なのだ。「つらい気もちも、悲しい気持ちも、……どうにもできない自分自身のいらだちも、もっと率直に言葉にするべき」なのだ。
 
 言葉は、私たちのあり方と同じように、けっして万能ではない。しかし、それを尽くしていくことで、善意の連盟を結んでいくことができる。譲や詩織、マヤたちが手と手を取り合っていけたように。私は、言葉への信仰へと、自分自身を企投する。
 
 『フラダン』の物語は、それぞれのキャラクターがそれぞれの役割を担って駆動する。彼ら彼女らの立ち位置は、基本的に常に明確で、勧善懲悪的な分かりやすさすら感じられる。その意味で、これはエンターテイメント小説だ。
 
 善の側に立つのが、譲、詩織、マヤたちだ。宙彦や健一、大河ももちろんこちら側に入るが、彼らはコミカル要員としての役割の方が大きいだろう。一方で悪の側に立つのが、男子では松下を中心とする水泳部のメンバー、女子では由奈を中心とする「新メンバー」だ。
 
 悪役が描きこまれるほど、物語は映える。終盤、マヤが過去の松下を思い出すところで、私は、膝を打たずにいられなかった。
 
 「小学校のときの松下君て……なんかいっつもびくびくしてて、全然目立たなかったんだよ」
 
 「でもね、だから私には、松下君って、いっつも大声で言えることを、必死になって探してるみたいに思えちゃう」
 
 大声で「正論」を振りかざすような人たちに、私は常々怯えている。そういう人たちは「自分の言葉で喋れない」のだと、そして、「だから、松下君は、ずっと辻本君のことが怖かったんだと思うよ」とマヤに言われ、妙に納得し、安心する思いだった。
 
 強がるのは、実際には弱いからだ。譲がいつも自然体で、善くいられるのは、譲が実際に強いからだ。
 
 一方、譲に比べて、詩織はそこまで強くない。しかし、物語の前半を牽引するのは、その詩織だ。詩織にそれほどの力を与えているのは、周囲の善意である。老人ホームへの慰問の際、踊りで大失敗をしてしまったにも関わらず、アーヌエヌエ・オハナはあたたかく受け入れられた。その善意が、詩織に力を与えていたのだ。
 
 『フラダン』は第八章の「仮設訪問」で、決定的な断絶を迎える。それはまるで、三月十一日の断絶をなぞるかのようだ。世界は、そのグロテスクな内臓を詩織たちに見せつける。絶対的な理不尽として姿を現す。
 
 そこから、詩織たちの再起と結束の物語が始まる。オハナのひとりひとりが言葉を交わし、お互いの思いを確かめていく。怠慢や甘えで口をつぐみ、なにも話さなかった自分たちを脱皮していく。
 
 詩織の過去、マヤの過去、健一が、大河が、アーヌエヌエ・オハナに入った理由……。そういったものが、ひとつひとつ解きほぐされていく。
 
 そして、フラガールズ甲子園の舞台で、譲が詩織に呼びかける。
 
 「綺麗なレイをあげましょう。踊り仲間のあなたに」
 
 その誘いに詩織が乗ったとき、詩織の大きな瞳に輝きが戻ったとき、物語は大団円を約束する。そして読者はマヤと共に喜びの声を上げるのだ。
 
 「キィイイイイェエエアアアアアーッ!」


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参考

話題ネタ!会話をつなぐ話のネタ,「【フラダン】読書感想文あらすじ(ネタバレ)と 例文・オススメ度」, http://xn--5ck1a9848cnul.com/8926 ,2017年5月3日閲覧.


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