2016年度「第62回 青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書、『大村智ものがたり:苦しい道こそ楽しい人生』の読書感想文例です。
分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で2枚と半分程度です。
大村智ものがたり:苦しい道こそ楽しい人生
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『大村智ものがたり:苦しい道こそ楽しい人生』を読んで
神奈川 太郎
ぼくがこの『大村智ものがたり』を読んで最初に思ったのは、
「大村先生は、自分のことを全然じまんしない人なんだなあ」
ということです。
大村先生はノーベル賞をとったのに、それを絶対に自分の力だとは言いません。いつも「運が良かったから」だと言います。小さい頃に農作業の手伝いをしていたからだ、スポーツをしていたからだ、両親や先生、奥さんに恵まれたからだ……。
しかしぼくは、大村先生自身にも、確かに成功をつかむ力があったのだと思います。その力のひとつが、物事を長い目で見られる力です。
ぼくたちはついつい、何かをしたらすぐに、ごほうびを欲しがってしまいます。お手伝いをしたらすぐに、お小遣いを欲しがってしまいます。
大村先生は、そういう目の前のごほうびに食いつきません。
例えば、エバーメクチンの製品化が決まったとき、メルク社は北里研究所に、特許の権利を「3億円で売ってくれ」と言ってきました。もしぼくが大村先生だったら、すぐに売ってしまったことでしょう。ところが大村先生はこれを売りませんでした。特許の応用範囲がこれからさらに広がると考えたからです。大村先生の予想は当たり、北里研究所にはメルク社から200億円以上のお金が支払われました。
新人研究者時代にしてもそうでした。徹夜で実験に取り組んだり、自分のお金を使って本や実験器具を買ったり、早朝から出勤したりしていました。早朝から出勤した分のお給料は、たぶん出ていなかったのだと思います。それでも、大村先生は、努力がいつか認められるはずだと思ってがんばったのでした。
いま、日本では、大村先生のような人たちが幸せになれるチャンスがどんどんなくなってきています。物事を長い目で見て、いつか認められるはずだ、いつか大きなごほうびがもらえるはずだと夢見て何かに打ち込んでいる人たちが、そのがんばりを裏切られています。
小さなお手伝いをたくさんして、小さなお小遣いをたくさんもらうのも、悪くはありません。しかし、200億円をもらうためには、3億円を六十七回ももらわなければいけません。
「どうにかして、小さなお手伝いで大きなお小遣いをもらえないかなあ」
今、物事を長い目で見て考えているところです。