2016年度「第62回 青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書、『ここで土になる』の読書感想文例です。
分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で3枚ぴったりです。
ここで土になる
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『ここで土になる』を読んで
神奈川 花子
私のお姉ちゃんはキリスト教系の学校に通っています。終業式が終わった日の夜、お姉ちゃんはわたしにこう言いました。
「ねえねえ、知ってる? 神様は私たちを土から作ったんだって。だから、私たちはいつか土に返らなくちゃいけないんだよ!」
お姉ちゃんの学校では、何か行事があるたびに「礼拝」があります。きっと、その日の「礼拝」で聞いてきたお話に違いありません。
お姉ちゃんによれば、私たちが土に返らなければいけないのは、神様が私たちに向けて決めたバツゲームなのだそうです。だからキリスト教では、善い行いをして、世界の終わりに復活させてもらえるようにがんばるのだそうです。
土に返りたくないと思う人たちがいる一方で、土に返りたいと思う人たちもいます。尾方さん夫妻はどうやら、土に返りたいと思っている人たちの中に入るようです。
二人は長い間、ふるさとの土に深く根を張って生きてきました。ダムが作られる計画が発表されて、他の村人が全員引っこしてしまったあとも、ずっと自分たちの家に住んでいました。
私たちの中には、学校の池に浮かぶ草のように、水の流れといっしょに住む場所を変えられる人たちもいます。しかし、校庭に立つ木のように、土に根を張ってしか生きられない人たちもいます。
これから大きく羽ばたこうとしている私たちにとって、根はどちらかというとジャマです。しかし、お年寄りの方々にとっては、根はとても大切なものです。英語でふるさとのことを「ホーム」と言いますが、それを空に飛ばしてでも、つみきのように積み重ねてでも、守っていこうとするおじいさんたちがいます。
尾方さん夫妻は、生まれてからずっとふるさとの土の上で暮らしてきました。そこには楽しい思い出がたくさんあります。二人にとって、そこからはなれることは、そうした思い出を捨ててしまうことになるのでしょう。絶対にできないことです。そして二人は、その思い出が染み込んだ土に返りたいと思っています。
おじいさんとおばあさんが、たった二人だけで暮らしていくのは、きっと大変だと思います。近くにコンビニもなければ、病院もないはずです。もし二人のうちのどちらかが調子を悪くしたら大変だと思います。周りの人たちは、
「みんなといっしょに暮せばいいのに」
と思っていることでしょう。
それでも、わたしは、二人にはそこで暮らし続けてほしいと思います。土から生まれた私たちは、それぞれの命を終えると、また土へと返ります。そのとき、ふるさとの土になりたいと願うのは自然なことです。
土になるのは恐ろしいことではありません。土は、私たちのお母さんなのですから。