2015(平成27)年度「第61回 青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書、『ぼくはうちゅうじん』の読書感想文例です。
分量は400字詰め原稿用紙で3枚を埋めるのにちょうどいいものになっています。
『ぼくはうちゅうじん』を読んで
神奈川 太郎
ぼくがこの本で読書感想文を書こうと思ったのは、絵が多くて字が少なかったからです。他の本に比べて読むのがとても楽だと思って、本の大きさは少し大きかったけれど、この『ぼくはうちゅうじん』を選びました。
でも、おしまいまで読み終わったとき、とても困ってしまいました。あまりにお話が短すぎて、書くことが思いつかなかったからです。これを読んで感想を書くなんて無理だと思いました。
仕方がないからもう一度はじめから読んでみます。五分もかからずに読み終えますが、やはり何もうかんできません。うんうんとうなりながらページをめくっていると、ふとあることに気づきました。
ぼくはこれまでこの本の文字のところだけを読んでしまっていました。しかしちがったのです。この本は絵本として読み、そして絵までふくめて味わう本だったのです。
お話の登場人物はたったの三人。「ぼく」、おとうさん、おかあさんです。三人はキャンプに来ていて、周りにはだれもいません。みんなの服を見ると寒い季節のようです。時間は日の出前。ページ一面が、星々の照らす夜の青にぬられています。そんななかで、ただおとうさん、おかあさん、そして「ぼく」だけはあたたかい光に包まれています。きっと家族のぬくもりなのでしょう。
おとうさんは物知りで、そしてよくだじゃれやじょうだんを言います。おかあさんはおとうさんのじょうだんをさらっと流します。ずっといっしょにいて、おたがいのことをよくわかっているにちがいありません。二人のきょり感がとても心地よく感じられます。そして二人ともが、「ぼく」をとても深く愛していることが、あたたかみのある絵から伝わってきます。
夜が明ける前の場面では、「ぼく」はおとうさんにリードしてもらいながら空想の世界に遊びます。星座のゆめの世界、想像もできないような大きな数字が出てくるファンタジーの世界……。でも夜明け前はやはり暗く、いくらおとうさんおかあさんがいるからといっても、少し不安に感じられます。
しかしその不安も夜明け、太陽の絵を見たときには一気に吹き飛んでいきます。ページは急にそれまでの青い世界から、一面にかがやく黄色とオレンジの世界へと変わります。それがどれほどぼくをほっとさせたことでしょうか。「ぼく」と同じように「ありがとう」と言って、かしわでをパンパンたたきたくなるくらいです。
『ぼくはうちゅうじん』は、字と絵との両方で、ぼくたちに家族のぬくもり、太陽のあたたかさを感じさせてくれる、とてもすてきな「絵本」でした。
参考
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