神奈川県教育委員会は3日、県ホームページ上に
令和3年度神奈川県公立高等学校入学者選抜等における学力検査の出題範囲等について
と題した記者発表資料を公開しました。
これによれば、神奈川県公立高校入試では以前から「資料が整わない者の選考」を行っているため、
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための臨時休業の影響により、「評定」がつけられない〔中略〕場合であっても、選抜資料としては支障がないことから、調査書の記載事項については、昨年度までと同様に取扱い、変更は行いません。
この対応においては、「資料が整わない者の選考」が第2次選考枠等を圧迫する可能性があります。
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目次
神奈川県公立高校入試の選考フロー
神奈川県公立高校入試(共通選抜)では、受験生が試験(学力検査・面接(・特色検査))を1回受けたあと、それらの得点に調査書の数値を併せて
- 第1次選考
- 資料が整わない者の選考
- 第2次選考
の順に選考を行っていきます。
最も多くの受験生に関係するのが第1次選考で、ここで募集人員の 90 %まで合格者が決まります。
次に「資料が整わない者の選考」が行われ、該当する受験生の成績が第1次選考合格者の成績に相当するかどうか判断され、合否が決まります。
最後に、第1次選考でも「資料が整わない者の選考」でも不合格となった受験生を対象として第2次選考が行われます。募集人員いっぱいまで合格者が決まります。
「資料が整わない者の選考」は他選考枠を削り得る
「令和2年度 神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜実施要領」13 ページによれば、
共通選抜募集人員の 90 %とは、共通選抜募集人員に 0.9 を乗じ、小数点以下を切り捨てた数値とする。ただし、資料の整わない受検者の数が、共通選抜募集人員から共通選抜募集人員の 90 %を減じた数以上の場合には、共通選抜募集人員から「資料の整わない受検者の数+1」を減じた数とする
とあります。
これは、「資料が整わない者の選考」が
- 第1次選考のあとに行われ、
- 該当者の人数や合格状況によって他の選考枠を削りうる
ことを意味するでしょう。
特に「資料が整わない者の選考」で多くの合格者が出た場合、調査書が合否に関係しない第2次選考の枠が狭まります。
第2次選考での合格を狙う受験生にとって最も危惧されるケースは、
- 「資料が整わない者の選考」の該当者数が第1次選考の合格枠を削らないにもかかわらず
- 「資料が整わない者の選考」の該当者のなかから多くの合格者が出るケース
です。
※逆に「資料の整わない受検者の数が、共通選抜募集人員から共通選抜募集人員の 90 %を減じた数以上の場合」で、そこからの合格者が少ない場合、第2次選考の枠が広がります。
例:募集定員 238 人、該当者 30 人
たとえば、いま、募集定員 238 人の高校があるとします。「資料が整わない者の選考」に該当する受験生がいなければ、
- 第1次選考:214 人合格
(238×0.9=214.2) - 第2次選考:24 人合格
です。
ここにもし「資料が整わない者の選考」に該当する受験生が 30 人志願したとすると、
- 第1次選考:207 人合格
(238-(30+1)=207) - 資料が整わない者の選考:X人合格
(X≦30) - 第2次選考:238-(207+X) 人合格
となります。
「資料が整わない者の選考」で多くの合格者が出た場合、制度上、第2次選考の合格枠が1人にまで減りうることが分かります。
※逆に、たとえばこの例で「資料が整わない者の選考」で合格者が0人だった場合、第2次選考の枠が7人分広がります。
例:募集定員 398 人、該当者 39 人
第1次選考の定員が削られない場合も考えてみましょう。
たとえば、いま、募集定員 398 人の高校があるとします。「資料が整わない者の選考」に該当する受験生がいなければ、
- 第1次選考:358 人合格
(398×0.9=358.2) - 第2次選考:40 人合格
です。
ここにもし「資料が整わない者の選考」に該当する受験生が 39 人志願したとすると、
- 第1次選考:358 人合格
- 資料が整わない者の選考:X人合格
(X≦39) - 第2次選考:398-(358+X) 人合格
となります。
この場合「資料が整わない者の選考」と第2次選考とを合わせた合格枠が増えていない以上、第2次選考で合格を狙う受験生は不利になるばかりだと思われます。
長期欠席の場合の「資料が整わない者の選考」
「資料が整わない者の選考」の方法ですが、たとえば長期欠席の場合には
- 2年生のときの内申点だけを使う
- 3年生のときの内申点だけを使う
- 内申点を使わない
の3つの「取扱い」のなかから、自分の希望するものを申請できます。
「内申点を使わない」場合には、「参考にできる資料を活用して適正に選考」されます。
Sources
神奈川県公立高校入試 不登校などへの「配慮」 2020 年度入試
https://kanagaku.com/archives/27931
評定が5段階絶対評価以外で「資料が整わない者の選考」
私立中学校などから神奈川県公立高校入試を受ける受験生も、調査書が5段階の絶対評価による評定を用いていない場合、「資料の整わない者の選考」に回ります。
その場合には
参考にできる資料を活用し、当該高等学校の選考対象者の中でどのくらいの順位に相当するかを判断し、前記の〔通常の〕選考方法に沿って選考
されます。「資料の整わない者の選考」に回ったからといって、不利にはならないとされています。
Sources
神奈川県公立高校入試 私立中学校からの受験生の調査書について
https://kanagaku.com/archives/9097
Note
※引用文の強調はカナガクによります。
参考
神奈川県では2,3年生の評価を使いますが、長期欠席や不登校などの理由で例えば「長期欠席により3年の評価を使用しないでください」という申請を中学校経由で出すことができます。判定方法は詳しく書けませんが、不利にも有利にもならないような仕組みがあります。
— 若園 久志 (@GreatDemon1701) January 16, 2018