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『茶畑のジャヤ』(中川なをみ)読書感想文例 小学校高学年

2016年度「第62回 青少年読書感想文全国コンクール」課題図書、『茶畑のジャヤ』の読書感想文例です。

分量は、題名・学校名・氏名を除き、400字詰め原稿用紙で3枚目の半分を超える程度です。

※ スリランカにおけるタミル人とシンハラ人との民族対立が、この本の主要テーマのひとつだと思われます。しかし以下の感想文例では、それにまったく触れていません。

茶畑のジャヤ

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『茶畑のジャヤ』を読んで

神奈川 太郎

 この物語は、主人公の周くんがスリランカへと旅して成長するお話です。ぼくは最後のページを読み終えたとき、

 「さあ、君も旅に出ようよ」

 と、さそわれているような気がしました。

 物語は大きく二つの場面に分かれています。周くんが日本の学校でいじめられている場面と、彼がおじいちゃんと一緒にスリランカを旅して周っている場面です。

 ぼくには、そのどちらもが、ファンタジーのように思えました。周くんが、ぼくたちに比べて、あまりにも恵まれているように感じられたからです。

 周くんは、夕方のきれいな景色を自然に言葉にして表すことができます。学校では全科目とも一番の成績だし、となりの席にはやさしい加奈ちゃんがいます。お父さん・お母さんも、とてもできた人です。何より、周くんには、辛い時にスリランカへと連れていってくれるおじいちゃんがいました。

 スリランカへ渡っても、周くんは多くの人たちに恵まれています。運転手のセナや、その娘のジャヤ、フィンランドから来た三人の少年たち……。

 健一郎にいじめられている周くんはかわいそうですが、それ以外のところで、周くんはぼくたちとは全然違う、素敵な、ファンタジーの世界に生きています。

 作者の中川なをみさんは、この物語をリアルなお話として書いたのでしょうか。ぼくには、とてもそうは思えません。たぶん、空想のお話として書いたのだと思います。

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 では、なぜそんなおとぎ話を書いたのでしょうか。それはきっと、ぼくたちに旅に出てほしかったからです。

 ぼくたちの本当の生活は、全然この物語のようではありません。ぼくたち自身は周くんのように優秀ではありませんし、家族にしてもそうです。また、学校や友だち、暮らしている町の中から、そうそう飛び出すことはできません。

 でも、もしも――と考えると、わくわくしてきませんか。もしも、ぼくたちも旅に出かけられたなら、と。例えばスリランカのようなところに行って、周くんがしたような体験ができたなら、と。

 毎日の生活の中から飛び出して、いつもと全然違うところに行けたなら、きっと何かが変わるのではないでしょうか。多くのかけがえのない経験をでき、全然違うぼくたちになることができるのではないでしょうか。

 もちろん、これはただの期待です。でも、新しい自分に出会えるのではないかという期待だけでも、ぼくはどこかへと旅に出たくなってきます。

 『茶畑のジャヤ』は、そんな期待と旅へのあこがれをかきたてるファンタジーでした。

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