目次
2020 年度、転居を伴わない転入学を希望する県立高校生はいなかった?
神奈川県は 2021 年 12 月に、
神奈川県子どもの貧困対策推進計画(令和2年度~令和6年度)
令和2年度 点検・結果報告書(案)
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/84529/02_shiryou1.pdf
を取りまとめました。
20 ページの県の「取組み内容」では、「転学の弾力化」が
県立高等学校においては、生徒の多様な学習のニーズに対応する柔軟な学びのシステムのひとつとして、意思ある若者に広く学習機会が提供できるよう、進路変更による転学の弾力化や高校中退者の積極的な受入れを行うとともに、こうしたしくみについて周知を行うなどの支援を進めます。
と謳われていますが、それに対応する「令和2年度の主な取組実績・効果」は
転入学については、積極的な進路変更や、教育的配慮を必要とする転学希望者はいませんでした。
というものでした(所管課は神奈川県教育委員会教育局高校教育課。引用文中の強調はカナガクによるもので、以下同様)。
「引っ越しするわけではないけれど転校する」が、制度上は可能
神奈川県では「公立高等学校転入学・編入学者の選抜」において、「転居を伴わない転入学」を認めています。
ウ 転居を伴わない転入学
(ア) 教育的配慮を必要とする特別の事情を有する場合
県内に在住する高等学校の在籍者で、教育的配慮を必要とする特別の事情により、現に在籍している高等学校における学業の継続が著しく困難と認められる者(イ) 積極的な理由に基づく進路変更を希望する場合
県内に在住する高等学校(県内公立高等学校に限る。)の在籍者で、積極的な理由に基づく進路変更を希望する者
しかし県教委によれば、2020(令和2)年度、そうした転学を希望する生徒はいなかったといいます。
参考文献
令和6年4月1日付け公立高等学校転入学・編入学者の選抜の実施について
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/107426/besshi1.pdf
転入学を希望しつつ退学を選んだ生徒はいなかったのか?
2020 年度の全日制中途退学者数は 991 人など
令和2年度 公立高等学校等生徒の異動の状況(令和3年5月1日現在)
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/1150/high_change_course_r02.pdf
によれば、2020(令和2)年度の全日制の課程における
- 転・編入者数は 99 人
- 退学者数は 991 人
- 長期欠席者数は 6,589 人
- 原級留置者数〔留年者数〕は 167 人
でした。
中途退学の理由で「学校生活・学業不適応」を主たる理由として挙げた(いくつかの選択肢からひとつを選ぶ)のは、384 人でした。
「人間関係がうまく保てない」ことで全日制を退学した生徒が 61 人
「学校生活・学業不適応」を主たる理由として全日制を中途退学(中退)した 384 人のうち、「人間関係がうまく保てない」ことで全日制の課程を退学した生徒数は 61 人でした。
注
※全日制の「30 日以上の長期欠席者」6,589 人のうち、その後「進級・卒業」したのが 5,428 人、「原級留置」が 170 人、「転出」が 446 人、「退学」が 545 人でした。
※全日制の「30 日以上の長期欠席者」6,589 人のうち、「新型コロナウイルスの感染回避を除く」人数は 4,654 人。
人間関係を理由に全日制を退学した 61 人は転入学を希望しなかったのか?
神奈川県教育委員会は、
県内に在住する高等学校の在籍者で、教育的配慮を必要とする特別の事情により、現に在籍している高等学校における学業の継続が著しく困難と認められる者
に対しては転居を伴わない転入学(転校)を認めています。
全日制の高校に通っていて「人間関係がうまく保てない」(や「その他」)ために退学にまで至るというのはよほどのことでしょう。「教育的配慮を必要とする特別の事情」に該当する事例もあったのではないでしょうか。
「人間関係がうまく保てない」(や「その他」)を理由として退学した生徒さんのなかには、いじめを受けていた(場合によっては、それによって長期欠席になってもいた)にもかかわらず、そのいじめが
- 認知されなかったり
- 解消したとされてしまったり
して、「教育的配慮を必要とする特別の事情」に当てはまらないと判断されて、転居を伴わない転入学を認められず、(全日制への)転校を希望しながら退学に至ったようなケースもあったのではないでしょうか。
原注
- 「長期欠席者」とは、1年間に連続又は断続して30日以上欠席した児童・生徒をいう。
- 「不登校」:何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあるもの(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く。)
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/12550/r2shiryou2_1.pdf#page=24
神奈川県立高等学校への転入学の取扱いについての運用基準https://t.co/ZYxnI2wn3M
— カナガク (@KanagakuCom) February 28, 2023
「Ⅰ 高等学校への転・編入学について」#転入 #編入 #転編入https://t.co/qAGuhDGUUu
— カナガク (@KanagakuCom) February 23, 2022
>「教育的配慮を必要とする特別の事情」が条件とされ、その証明のために「教育センターの専門相談員との相談」指導が必要とされ、「いじめ」など極めて限られた場合しか認定されないようになっている。#転入 #編入 #転編入https://t.co/yJxuLxbdmr
— カナガク (@KanagakuCom) December 12, 2022
>全日制高校から、定時制高校ばかりではなく、通信制高校へと転入学する生徒はかなりの数に上っているとみられる#再入学 #転入 #編入https://t.co/yJxuLxbdmr
— カナガク (@KanagakuCom) December 5, 2021
高校がいじめを認めればそれを理由として転校(全日制から全日制への転入)できるのに、 いじめが認められないために転校できず、そうこうするうちに出席日数の不足で進級できなくなり、結局全日制を退学し定時制または通信制へ――という事例は相当数あるのではないでしょうか。
— カナガク (@KanagakuCom) April 24, 2024
>(2) 募集区分Bの対象者
[HTML]https://t.co/PkszHhrwvN [PDF]https://t.co/yHtwR9J1V5
>県内に在住する高等学校(県内公立高等学校に限る。)の在籍者で、積極的な理由に基づく進路変更を希望する者(原則、同一学科間で第2学年)#転入 #編入 #転編入— カナガク (@KanagakuCom) February 28, 2023
※「教育的配慮を必要とする特別の事情」が関係するのは募集区分A。
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