教職員人事異動

神奈川県内私立高校の非常勤の先生「私たちは使い捨てじゃ……」

『AERA』7月 22 日号は

私立高校の非正規教員が悲鳴 サービス残業「月 160 時間」
私立校の教員の約4割が非正規/突然の「雇い止め」通告に提訴

と題した記事を掲載しました。

記事には「3月までの4年間、神奈川県内の私立高校で非常勤として働いていた 20 代の女性教員」の話がつづられています。

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私立は残業代を出さなければいけないが

記事によれば

女性は1コマ 2500 円の授業を週 18 コマ担当し、運動部の顧問も務めた。テストの作成・採点、学期末の成績会議にもほぼ出席した。それでも給与は手取りで月 18 万円ほど

だったといいます。1コマ 2500 円の授業を週 18 コマ、4週間でちょうど 18 万円になりますから、税や社会保険料の分程度の残業代しか出ていなかったことが分かります。

女性が顧問をしていた運動部は5年連続全国大会に出場していた

そうですから、きっと一部残業代の不払いがあったのでしょう。

公立学校の場合、先生方に残業代は出ません。しかし、私立学校の場合には民間企業と同様に、残業代を出さなければいけません。

【参考】弁護士ドットコムニュース
「私立教員、残業代請求したら同僚から批判 学校は『自主的な活動だ』と拒否」
https://www.bengo4.com/c_5/n_9604/
2019 年5月5日(同7月 15 日閲覧)

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「どうしても専任になりたくて」

私立学校の非常勤講師の先生のなかには、「一生懸命がんばれば、専任講師にしてもらえる」という望みを糧に、日々の薄給激務に耐えていらっしゃる方々がいます。

ごくごく一部の学校では、専任登用をちらつかせながら、無期転換ルールが適用される5年を目前にして、非常勤講師の先生方を「雇い止め」にしているようです。

※ 想定しているのは神奈川県内の学校ではありません。


私立学校は不祥事に強い

競争原理があまり働いていない私立学校では、たとえそうした疑惑が浮かんでも、生徒募集にはあまり関係しません。そのため、貴重な若い時間を費やした非常勤の先生方の無念が表出しづらいという問題もあります。

「高等学校の設置認可……は見合わせる」

「生徒募集にあまり関係しない」というのは、たとえば神奈川県の場合、「生徒急減期中である当面の間は、原則として、高等学校の設置認可……は見合わせる」ことになっています。

※ 神奈川県,「神奈川県私立高等学校設置に関する取扱基準」,http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/783062.pdf https://web.archive.org/web/20190416013712/http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/783062.pdf,2019 年4月 16 日閲覧.

公私での募集定員の協議

また、高校の募集定員に関しても、

募集定員については、神奈川県公私立高等学校設置者会議の合意事項を踏まえ、県内公立中学校卒業予定者数、地域的な増減、県立高校改革実施計画及び各高等学校における施設の状況等を勘案し、策定しています。

とされており、私立高校に一定のパイが割かれるように毎年話し合われています。

※ 神奈川県教育委員会,「平成31年度神奈川県公立高等学校生徒募集定員について」, http://www.pref.kanagawa.jp/docs/dc4/prs/r6607519.html ,2018 年 10 月 26 日(2019 年7月 15 日閲覧).


学校選びのひとつの観点に

これから夏休みにかけて、多くの受験生のみなさんが「学校選び」をしていくと思います。そのときにはぜひ、その学校が先生方を「育てて」いるかどうかに目を向けていただきたいと思います。


参考

参考までに、極めて政治的色合いが強い記事ではありますが、塾講師にも他人事ではない「コマ給問題」について今野晴貴さんが記事を書いています。

今野晴貴,「『搾取』される非正規教員たち 露骨な脱法、徹底した支配 ……の戦略とは」, https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20190417-00122672/ ,2019 年4月 17 日(同7月 15 日閲覧).

学習塾経営事業者の「コマ給問題」に対しては、神奈川労働局が改善要請を行っています。

神奈川労働局,「学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント」, https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/1443/20182221457.pdf,2018 年2月(2019 年7月 15 日閲覧).