「神奈川県 夏のすいせん図書読書感想文コンクール」高学年の部の課題図書、エリン・ハンターの『サバイバーズ1 孤独の犬』の読書感想文例です。
400字詰め原稿用紙で3枚目にかかる分量になっています。夏休みの宿題で困ったときなど、参考になさってください。
『サバイバーズ1 孤独の犬』を読んで
神奈川 太郎
この本はまるでハリウッド映画か、アメリカの人気ドラマシリーズを観ているかのような気持ちにさせられる作品です。
主人公ラッキーが私たちに示すのは、ひとりで生き抜く強さや、自由のためには孤独や戦いをも受け入れる姿です。一方で彼が否定するのは、群れなければ生きていけないひ弱さや、他者への依存心です。とてもアメリカ的な、ハードボイルドなヒーロー像だとは思いませんか。
物語の舞台も、地震によって廃きょとなった街です。暴力が支配し、強くなければ生き残ることすらできません。これは西部劇の荒野ではありませんか。そしてそこを一人でさまようラッキーは、まさにカウボーイそのものです。
だれをも頼ることができない世界で、だれにも頼らずに生きていく。そういう姿への無邪気なこう定感が、この作品に安定感を与えています。
安定感といえば、ドラマの展開も王道を行くものです。作劇の文法とでもいうべきものが、ヒット映画や人気ドラマを思い起こさせます。
ラッキーのもとに集まった犬たちはみんな、初めは弱々しい飼い犬でした。ニンゲンに頼り切り、ニンゲンがいなければ生きていけないような犬たちでした。そんな彼らが命の危機をくぐり抜け、強大な敵から逃れるなかで、自分たちの中にある野性を目覚めさせていきます。だんだんとひとりひとりの能力を開花させ、強くなっていきます。そして初めは自分のことだけしか考えていなかった身勝手な犬たちが、だんだんひとつのチームを作り上げていくのです。まさに『荒野の七人』や『アベンジャーズ』の世界ではありませんか。
それにしても気になるのは、続編の展開です。安住の地を見出したかに見えた犬たちのもとを去ったラッキーは、彼らに再び降りかかった危機を救えるのでしょうか。そもそも、かつてのチームを襲っているものはいったい何なのでしょうか。
読み終えたその瞬間から、二巻を手に取るのが待ち遠しくて仕方ありません。
参考
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